チベット語:ツェパメ
梵語:アミタユス
法然上人の浄土宗、”親鸞聖人”の浄土真宗などで西方の浄土スカヴァティ(極楽浄土)に生まれ変わることを願い日本でも広く信仰を集める尊格”阿弥陀如来”。その姿が僧衣を身に付けた姿で描かれるのと対照に、本タンカに描かれた阿弥陀如来のロン・ク(報身)である無量寿菩薩は宝冠、耳環(じかん:イヤリング)、三種類の長さの瓔珞(ようらく:首飾り)、腕釧(わんせん:ブレスレット)、足釧(そくせん:アンクレッと)、装飾されたベルトといった八つの菩薩の装身具を身に付けた姿で描かれ、禅定印を結んだ両手には不死の甘露(アムリタ)で満たされた壺を持ちます。
その名の示すように、長寿の尊格として信仰される無量寿菩薩は長寿三尊(ツェ・ラ・ナムスム)として、同じく長寿の尊格である”ドルカル”(白ターラ仏母)と”ナムギャルマ”(仏頂尊勝母)と共にタンカに描かれることがあります。
制作年:2003年
寸法:31.5×45cm
<基底材>
綿布、チョーク、膠液
<彩色画材>
藍銅鉱、朱、孔雀石、本藍、純金泥など。
チベットの伝統的な手法で制作されたキャンバス全体を朱色で塗った「マル・タン」と呼ばれるタンカ。
光背部分は内側を群青(藍銅鉱)の美しい青色で彩色し、緑青(孔雀石)で彩色された細い帯状の部分の外側は純金泥で彩色されています。
膠で溶いた純金泥の彩色部分はそのままでは艶のないマットな輝きですが、それを堅く滑らかな石などで磨くことによって美しい金属的な輝きが出ます。本タンカでは、光背外側の金泥部分や装身具にこの処理が施され、尊格の身体の赤色、光背内側の青色と美しいコントラストを作り出しています。
中央の無量寿菩薩の周りには、純金泥の線描で細かく描かれた小さいサイズの無量寿菩薩が、主尊を取り囲むように整然と描かれていますが、タンカにおいてしばしば見られるこのような画面構成は、それにより尊格の功徳が増すことを願うと同時に、尊格が衆生を救う際の方法や顕現が無限であることを象徴しています。
無量寿菩薩の衣を埋める純金泥の文様部分。
禅定印を結ぶ両手の上の甘露で満たされた宝瓶。
中央の主尊と同じ姿で小さく精緻に描かれた尊格。