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■第二回 仏と神■
 
 タンカを描いていると「この神様は何という名前ですか?」とか「どういう神様ですか?」と聞かれることがあり、「これは神様ではなくて、仏様ですよ。」と言う機会が何度かあったので今回のテーマにしてみました。
 
確かに日本人にとってこの二つは結構あいまいな部分があるように思います。 お釈迦様の絵を見せられれば”これは仏だな、、。”とわかる方でも、タンカにあるような目が三つあったり手が何本もあったりするものだと少々迷うこともあるのではないでしょうか。 日本にもともと存在した神々が仏教伝来後 「神仏習合」といって仏教の教えに取り入れられたこともこの二つの区別を難しくしている理由でしょう。
 
 まず、”神”と一言で言っても、キリスト教の神、ギリシア神話の神、日本の神、、、等など世界各地、宗教によって様々な”神”が存在するのですが、とりあえず今回ここで言う”神”は、四天王や弁財天などの仏教に存在する神とします。 これらの神々はヒンドゥー教から取り入れられたものが多いのですが、それ以外にもチベット仏教ではもともとチベット土着の神で仏教に取り入れられたものも数多く存在します。
  
 次に”仏”についてですが、日本で”ブッダ”というとお釈迦様を指すことか多いのですが、この”ブッダ”と言うのは”悟った者”を示す尊称です。 ですから単に”ブッダ”と言った場合、その示すものはお釈迦様の他にも阿弥陀如来や大日如来、更に憤怒の様相を持つものまで数多く存在します。

また”仏”と言うと、お釈迦様や阿弥陀様などの如来と呼ばれるものから文殊菩薩、観音菩薩などの菩薩や、護法尊なども”仏”と呼ばれることがあり、これもまた判断がつきにくいのですが、今回ここでは悟りを開く段階上にいる菩薩や護法尊などを含まず、すでに真理を得て悟りを開いた者を”仏”とすることにします。 
        
 前置きが長くなりました。本題ですが、ではこの2存在はどのように異なるのか? 簡単に言うと、仏は解脱した存在であり、神はいまだ解脱を果たしていない存在、となります。
  
チベット仏教をご存知の方や、チベット寺院を訪れた方ならチベットの”六道輪廻図”というのをご覧になったことがあると思いますが、これを見ればわかりやすいでしょう。
 
これはタンカにもよく描かれることがある題材で、私たちが生死を繰り返す中で巡りつずけて来た、また今後も巡りつずけるであろう六つの世界が描かれているものです。 他にも色々なことが描かれているのですが、これを説明しだすと文章がとんでもなく長くなってしまいそうなので今回は省きます。
  
 さて、この”六道輪廻図”に描かれている六つの世界というのは天上界、修羅界、人間界、畜生界、餓鬼界、地獄界の六つです。

仏教の方便の一つとして輪廻思想があり、私たち人間を含む全ての生きとし生けるものは、死をもって終焉を迎えるのではなく、この六つの世界のいずれかに又生まれてくるというのがあります。 
そのようにして私達は根本的には”苦”であるとされるこの六つの世界をあっちに行ったりこっちに行ったりしていて、いつまでたってもこの輪廻から抜け出ることができない、つまり”苦”から抜け出すことができずにいるわけです。
  
神界がこの六道に含まれていることからもわかるように、他に比べてはるかに長い寿命を持ち、人智を超えた能力を持つとされる神々でさえもこの輪廻の中にいるとされているのに対して、”仏”と呼ばれる存在はこの輪廻の六界の外に存在する者、つまり解脱した者ということです。 
  
どうでしょうお分かりいただけたでしょうか?
これが仏と神の違いです。 本質的に”苦”とされる輪廻に縛られずに解脱した者が”仏”で、対して”神”はまだ解脱していない者、です。
  
 ただ注意すべきなのが、チベット語で”神”を表す”ラ”という言葉。
これは神のみでなく仏に対して使われることがあったり、王などの偉大な人物に対しても使われることがあります。 これは凡人とは異なる崇高な存在に対しての敬称としての広い意味で、仏や神そして王などを”ラ”と呼ぶのですが、その逆に神や王を”ブッダ”と呼ぶことはありません。
  
 また、日本ではそれほど知られていませんが、チベットでは誰もが知っているターラーという尊格は”女神”と呼ばれることもあれば、”ターラー菩薩”と”菩薩”として呼ばれることや、”全てのブッダの母”としてターラー自体も”仏”、つまり解脱した者として位置づけされることもあります。
  
このように、これだけの説明で仏教に存在する多くの尊格を、「これは仏、これは神」と判断することは困難だと思いますし、仏教の教えを熟知しているわけでもないただの絵師である私の説明では少しわかりづらかったかもしれませんが、なんとなくでもわかっていただけたでしょうか。
  
もし、 「よくわからないけども少し興味がわいた。」と感じられた方がいたならば、私よりもよくご存知で説明の上手な方は沢山いますので、何かの機会にネットで調べたり、書籍などを手にして見ていただければ幸いです。


       
〜第二回 ”仏と神”〜
2006.4.17

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