チベット語:ドルマ・カルポ、ドルカル
チベットで最もよく知られる尊格の一つで多くの変化身を持つターラ仏母は、光の角度や周囲の環境によって虹のような様々な色を映し出す水晶に例えられますが、中でも広く信仰されているのが”緑ターラ仏母”と”白ターラ仏母”です。
片足を前に出す姿で描かれ、仏陀の悟りの行為を象徴する動的な尊格・緑ターラ仏母に対し、白ターラ仏母は、心と体の病を治癒し長寿を与える癒しの静的な尊格と言われます。
涼やかで静謐、そして心休まる秋の満月に例えられる光背を背に、蓮台の上の月輪に結跏趺坐で座す白ターラ仏母の白い身体は、穢れがなく完全であることを象徴し、左手の親指と薬指で持つ蓮華は、”花弁の散った後のもの”、”これから開花する蕾”、そして”完全開花しているもの”の三つの異なる状態のものが描かれ、それぞれ過去仏”ウースン”(迦葉仏)、未来仏”ジャンパ”(弥勒菩薩)、今の時代の仏陀”釈迦牟尼”の三世仏を象徴しています。
白ターラ仏母のもっとも顕著な特徴として七つの眼があります。額の智慧の眼と両眼に加えて、両手の平、両足の裏にそれぞれ一つずつある七つの眼は白ターラ仏母の全ての行いが、究極の智慧と慈悲から発せられることを象徴し、あらゆる世界の衆生の苦しみを逃さず見出すとされます。
制作年:2006年
サイズ:21×28.4cm
<基底材>
綿布、チョーク、膠液
<彩色画材>
藍銅鉱、孔雀石、辰砂などの鉱石を砕いた顔料、本藍やラックなどの染料、緑土や黄土、純金泥など
長寿と癒しの尊格白ターラ仏母を描いたA4程度のサイズのこのタンカは、小さいサイズながらも各部分への美しいぼかし、金泥による紋様描きなどにも時間をかけ細密な描写が施されています。
天然の顔料を使った色は力強くも落ち着いた発色で、装身具など一部の金泥で彩色した部分は瑪瑙で磨くことにより輝きを出し、尊格をより神々しく荘厳に表現しています。