埋蔵教サンパ・ルンドゥプマの中に記されている13体の”グル・リンポチェ”の変化身の一つ、薬師如来の相に変化した姿。
その姿はグル・リンポチェと同じようにいくつかの衣を重ねて纏い、孔雀と鷲の羽で飾られた帽子をかぶる姿ですが、その身体はベンドゥリヤ(ラピスラズリ)のような美しい青色で、左手に薬で満たされた鉢、右手には貴重な薬用植物(アルラ)を持つ姿で描かれます。
ウゲン・メンラを供養し、瞑想そして真言を唱えることで病を治癒に導き、特に疫病や伝染病の苦しみから解放され、長寿を得ることができると言われます。
またウゲン・メンラの修行は世俗の真理レベルの病苦を癒すだけでなく、究極の智慧を悟り、完全に”苦”を滅することができるとも言われます。
制作年:2009年
寸法:20×27.6cm
<基底材>
綿布、チョーク、膠液
<彩色画材>
ガッシュ、本藍、純金泥など。
A4サイズの小さいタンカではあるものの、衣への文様描き、純金泥を贅沢に使用した光背部分、つがいの鶴や孔雀、様々な供物、そして濃淡を調節した無数の細く線を描き込むことで作り出された空や湖などの暈しなど、実際のサイズを感じさせない非常に細かい描写がされています。
”グル・リンポチェ”の変化身、薬師如来の法力を持つ姿のウギェン・メンラは深い青色で彩色され、光背外側の部分は純金泥を磨き美しい輝きを放っています。中央にはカルマ・ガディ派独特の雲と様々な供物が描かれ、向かって左側に長寿の象徴”鶴”、右側には毒を征する”孔雀”がそれぞれつがいで描かれ”除病安楽・諸根具足”を表わしています。
左手の鉢の中に描かれているのは、チベット語で”アルラ”と呼ばれる薬用植物。
宝珠、珊瑚、象牙、サイの角など様々な供物。
光背を飾る模様は純金泥を磨いて輝きを持たせ、宝珠を巻き込む様に描かれる。