チベット語:ドルマ、ドル・ジャン
衆生を救う”観音菩薩”の慈悲の行為の手助けをするべく生まれ、”ターラ仏母二十一尊”に描かれる様々な変化身をはじめ、多くの女尊はターラ仏母の変化身と言われます。またチベットの歴史上の人物にも、このターラの化身であると言われる女性が数多く存在し、様々な困難、苦境に苦しむ衆生を救済し加護を与えることから”救度仏母”とも呼ばれ、観音菩薩と共にチベットでは非常に人気のある尊格です。
多羅菩薩と称されることもありますが、チベット仏教においては多くの場合完全に悟りを開いた仏とされ、”悟りの智慧または行為”を象徴するとして”すべての仏陀の母”とも呼ばれます。
数多くのターラ尊の中でも、チベットで最も信仰されているのが”白ターラ仏母”と”緑ターラ仏母”です。白ターラ仏母が”癒し・長寿”の尊格であるのに対し、緑ターラ仏母は衆生に”加護”を与える尊格と言われ、その功徳を表わすタンカとして良く知られているものに、チベット語で”ジクパ・ギェー・キョプ”と呼ばれる、「獅子、象、火事、蛇、盗賊、牢獄、洪水、食人鬼」の八つからの救済を伝える”八難救助”があります。
制作年:2005年
寸法:31×47cm
<基底材>
綿布、チョーク、膠液
<彩色画材>
藍銅鉱、孔雀石、本藍、黄土、胡粉、純金泥、新岩絵の具、洋金粉など
本タンカは、チベットで広く信仰される緑ターラ仏母を日本の仏画の雰囲気で描いたものです。
通常のタンカに描かれるような空や山などの背景は描かれず、ターラ尊の座す蓮台が咲き出る湖水が淡く描かれているのみで、薄い黄土色の背景上部に”阿弥陀仏”の体の輝きを表わした赤い暈しをかけ、その中央、ターラ尊の頭上には、金箔を撒いた円の中に阿弥陀仏の種字”Hrīḥ”がレンツァ文字で書かれています。
金属的な輝きで尊格を荘厳に飾る純金泥部分。
純金泥の極細い線で描かれた衣の文様。
細かい金箔を散らした円の中に描かれた種字”Hrīḥ”。